【業績だけじゃない】 今回の決算シーズンで最も注目すべき点とは

株式情報 投資戦略 日本株 2024.05.19

遠藤 悠市 遠藤 悠市

毎年5月は企業の本決算が集中する決算シーズンです。

 

今年は、8日から決算件数が多くなり、15日までは1日で100~700件の決算発表が予定されています。

 

5月の決算発表は第4四半期、いわゆる本決算が多くなる傾向があり、今期の見通しや新たな経営計画の発表などに注目が集まります。

 

 

・決算には種類がある

 

上場企業が投資家向けに業績や財務状況を開示する決算には1年に1度、決算期に行う本決算と、3カ月ごとに行う四半期決算があります。

 

その内容は「決算短信」として発表されます。

 

国内では4月から翌年3月までを1年度として3月に本決算をする企業(3月期決算企業)が

多く、その決算短信が出るのは4月から5月にかけてとなります。

 

・本決算が重要視される理由とは

 

決算発表は年4回行われますが、中でも本決算は特に注目が集まります。

 

その理由としては、今期の業績見通しや配当性向などが示されるためです。

 

本決算では今年度、その企業がどの程度成長するのか、どのような事業環境の見通しを立てているのかがわかるため、今後投資を行う際の大きな判断材料となります。

 

・今回の本決算で最も注目すべき点

 

通常、本決算では業績見通しや配当性向などが注目されますが、今回本決算を発表する企業には、それよりも注目すべき点があると見ています。

 

それは、資本政策の見直しや株主還元強化を踏まえた新たな中期経営計画を発表しているか

という点です。

 

2023年3月、東京証券取引所から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が発表され、上場企業の多くで「PBR1倍割れ」が起きていること、資本収益性や成長性の観点で課題があることなどが指摘されました。

 

PBRが1倍を下回るということは、理論上は株式価値よりも解散価値の方が高く、今後事業継続して得られる価値よりも、会社が解散した場合に株主に分配される金額が高いと評価されてしまっているということになります。

 

つまり、現状では今後の成長に対して市場の評価・期待が低いことの表れとも捉えることができます。

 

東京証券取引所からの要請を受けて、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」としてPBR1倍割れの是正に取り組むことを発表している企業も増えましたが、

このような開示をいまだに行っておらず、検討中としている企業は、2023年時点で250社以上あります。

 

PBRが1倍を下回る企業は不必要に保守的な見通しを出すと、今以上に株価を下げる可能性もあります。

 

また、他の企業がPBR1倍の回復を狙い、資本政策の見直しや株主還元強化を行っている中、そのような取り組みができない企業には、安定株主となるような長期的な投資資金の流入も難しくなる可能性もあります。

 

なので、今回の本決算発表で、PBR向上のための資本政策の見直しや株主還元強化を公表してくる企業があると見ています。

 

例としては、自社株買いや配当性向の変更、政策持ち合い株の売却による株主還元など株価にとってポジティブな要素が多いと考えられることから、今回の本決算では、業績や事業環境の見通しのほかに、このような資本政策の見直しや株主還元の強化に注目しておくべきだと見ています。

 

株式情報 投資戦略 日本株 2024.05.19

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この記事を書いた人

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト

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