【大注目のエヌビディア決算】 東京エレクトロンなど国内半導体株への影響は?

株式情報 投資戦略 日本株 米株 2024.09.11

遠藤 悠市 遠藤 悠市

米国の半導体大手であるエヌビディアが28日に2024年5〜7月期決算を発表しました。

 

エヌビディアの決算内容で、世界の株式市場が影響を受けるため、同社の決算発表は今や、世界中が注目するビックイベントとなっています。

 

もちろん、その影響は半導体関連銘柄を筆頭に、日本株式市場にも及びます。

 

そんな、世界中が注目するエヌビディアの決算ですが、売上高、純利益、あわせて発表された8〜10月期の売上高見通しも市場予想を上回ったものの、株価は時間外取引で一時、8%ほど下落しました。

 

これを受けて、日本株式市場でも東京エレクトロンやディスコなど指数寄与度の大きい値がさの半導体関連株に売りが波及する形となりました。

 

市場予想を超える決算を出したエヌビディアがなぜ、発表後売りに押されたのか?

そして、エヌビディアの影響を受ける国内半導体企業は今後どうなるのか?

 

今回はこの2点を深堀して解説していきます。

 

・エヌビディアの決算内容と時間外で下落した原因

 

28日に発表された2024年5〜7月期決算は、売上高が前年同期比2.2倍の300億4000万ドル、純利益が2.7倍の165億9900万ドルとなり、四半期ベースで過去最高を更新しました。

市場予想は、売上高が2.1倍の約287億ドル、純利益は2.4倍の約150億ドルで、ともにこの水準を上回っています。

 

あわせて発表された8〜10月期の売上高見通しも、325億ドル前後と市場予想の約317億ドルを上回り、AI向け半導体の需要の高さを示しました。

しかしながら、株価は時間外取引で一時、8%ほど下落する場面がありました。

 

市場予想を上回った内容であったはずなのに、なぜ下落の反応が出たのか?

 

この要因の1つとして考えられるのは、上昇基調にあったエヌビディアの利益率がピークアウトした可能性があるためです。

 

5〜7月期の売上高総利益率は75.1%と、2〜4月期の78.4%から低下し、8〜10月期の見通しでは74.4%としており、利益率の改善が止まった背景には歩留まりの悪化があると考えられます。

 

また、新製品の次世代AI半導体「ブラックウェル」の出荷が設計変更で遅れていると8月上旬に相次いで報じられており、28日の四半期決算説明会で同社CEOであるフアン氏は、アナリストからブラックウェルの売上高について尋ねられましたが、詳細を避けました。

これにより、24年11月〜25年1月期に数十億ドルの売上高を見込む「ブラックウェル」が、

本当に実現するのかと不確実性が高まったことも要因として考えられます。

 

エヌビディアの決算は回数を追うごとに市場予想が引き上がり、投資家の期待も高まる一方でした。

今回の決算内容は市場予想を超える着地となっており、市場の期待に応えたかに見えましたが、高すぎる期待感から些細な利益率の変化ですらネガティブな要因として捉えられているため、今回の決算発表直後に下落の反応が出たと考えられます。

 

・エヌビディアの決算が日本株式市場に影響をもたらす理由

 

エヌビディアの決算が日本株式市場になぜ影響を与えるのか?

それは、日経平均を構成する銘柄の寄与度が関係してるからです。

 

日経平均株価は、東京証券取引所プライム市場上場銘柄から選定した225銘柄から構成されていますが、現在の寄与度は1位がファーストリテイリングで寄与度10.93%、2位は東京エレクトロンで寄与度9.66%、3位はアドバンテストで寄与度4.65%、4位はソフトバンクグループで寄与度4.52%、5位は信越化学工業で寄与度2.76%となっています。

 

上位5社のうち3社が半導体関連企業であり、さらに4月1日からディスコ、ソシオネクスト、ZOZOを新規で日経平均構成銘柄に採用しています。

このうち、ディスコは半導体メーカー・電子部品製造・加工で世界首位であり、ソシオネクストは半導体の、設計・開発から販売までを手掛けるメーカーです。この2社も半導体関連ですので日経平均はより一層、半導体・AI関連の影響を受けやすい指数になっています。

 

このように、指数を構成する銘柄が半導体関連に偏っているため、エヌビディアの決算が

日本株式市場に影響をもたらすのです。

 

・エヌビディアの影響は薄れつつある

 

これまで、国内半導体企業の多くが、エヌビディアの決算を受けて大きく動く場面が見受けられましたが、直近ではその影響が徐々に薄れてきているとみています。

 

この理由の1つとしては、生成人工知能の収益貢献度に大きな格差があることが知られるようになったためだと考えられます。

 

エヌビディアと国内半導体企業の業績拡大ペースの差が鮮明となっており、エヌビディアは2024年1月期の純利益が前期比6.8倍となり、25年1月期も市場予想は前期比で2倍以上の見込みです。これに対し、国内を代表する半導体企業の東京エレクトロンやアドバンテストの25年3月期の純利益予想は23年3月期を下回ります。

 

これは企業の収益構造に違いがあるためです。

エヌビディアは画像処理半導体(GPU)に特化しており、売上高の約8割が現在需要が急増している生成AIなどのデータセンター向けとなっています。これに対して、国内半導体企業の製造装置はスマートフォンやパソコン、車載向けなど様々な用途の半導体を作るのに幅広く使われるものとなっています。

今期の売上高に対する生成AI関連の割合は、影響度の大きいディスコやアドバンテストでも10%台半ばで、東京精密が1割弱、SCREENやレーザーテックは数%にとどまるとも試算されており、生成AIの業績貢献は小さいと考えられています。

 

このことから、エヌビディアの決算後に国内半導体企業がつられて大きく動くことが少なくなっていると思われます。

市場の関心は、エヌビディアを中心とした生成AIから、半導体製造装置全体の成長に徐々に移っていると考えられ、これは国内半導体企業へは個別の評価が進むことだと見ています。

 

半導体はスマートフォンや電気自動車にも多く使われており、本格的な回復局面に入れば恩恵の裾野は広いと見られます。

 

例としては、半導体試験装置で世界大手のアドバンテストが7月31日に発表した第1四半期決算で今期業績見通しを上方修正するなど、生成AI以外の部分でも半導体関連の成長が見られるようになってきています。

 

エヌビディアの影響が徐々に薄れていく中で、評価されるのはしっかりと業績が乗ってきている半導体関連となるでしょう。

株式情報 投資戦略 日本株 米株 2024.09.11

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遠藤 悠市

この記事を書いた人

遠藤 悠市

日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト

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