【超大型IPO】JX金属が東証プライム上場!将来性・配当・株価見通しを徹底解説
株式情報 投資戦略 日本株 新規上場(IPO) 2025.03.18

2025年3月19日、JX金属が東京証券取引所プライム市場に上場します。
JX金属は、半導体・情報通信分野に欠かせない先端素材を製造・販売する企業で、半導体用スパッタリングターゲット(世界シェア64%)や圧延銅箔(世界シェア78%)を主力製品としています。
生成AI向けデータセンターや次世代半導体市場の拡大に伴い、今後の成長が期待される企業です。
また、今回のIPOは、2024年に上場した「東京メトロ」や「キオクシアホールディングス」と並ぶ規模の超大型案件となります。
国内売出株式数は約3億7,445万株と多く、当選確率が比較的高いことも注目ポイントです。
本記事では、JX金属の事業内容、成長戦略、IPOのポイント、そして上場後の株価の見通しについて詳しく解説します。
目次
JX金属とは?会社概要と市場シェア
JX金属は、半導体・情報通信材料の製造、資源開発、金属製錬、リサイクルを手掛ける企業です。
ENEOSホールディングスの子会社として位置づけられていましたが、今回の上場により、半導体関連企業として独立性を強めることになります。
JX金属の主力製品
JX金属は、特に以下の製品で圧倒的なシェアを誇っています。
・半導体用スパッタリングターゲット(世界シェア64%)
半導体製造過程で使用される部材であり、直近ではデータ演算需要の飛躍的な増加により成長が見込まれる生成AIサーバにも同社の製品が使われています。
・圧延銅箔(世界シェア78%)
スマートフォンやウェアラブル端末、モビリティに使われる材料です。
いずれも半導体・情報通信分野に欠かせない先端素材であり、その成長が今後の株価の鍵を握ります。
JX金属の成り立ちとENEOSとの関係
JX金属の歴史は古く、1905年に操業を開始した日立鉱山が起源です。
実は、分離独立や統合を経てJX金属の前身となった「新日鉱ホールディングス」は、2010年まで東証1部に上場していました。
その後、「新日鉱ホールディングス」が、ENEOSの前身である「新日本石油」と統合し、「JXホールディングス」が設立されます。
さらに、2017年には「東燃ゼネラル石油」と統合し、ENEOSホールディングスが誕生。
JX金属はこの時、ENEOSグループの中に位置づけられることになりました。
今回のIPOでは、親会社であるENEOSホールディングスが保有株の約半数を売却します。
この時、JX金属はENEOSグループから完全子会社から脱却することになり、非鉄金属大手から半導体銘柄へと転身をはかる形となります。
JX金属の売上高、利益と将来性は?
続いて、JX金属の足元の業績や今後の成長戦略について見ていきましょう。
2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績予想は以下の通りです。
売上高:7,000億円(前期比53.7%減)
税引前利益:914億円(前期比16.1%増)
一見すると大幅の売上高が減少する見込みですが、これは、子会社2社の一部株式譲渡によって、両社が同社の連結子会社から持分法適用会社へ変更となり、売上高が連結範囲から外れるためです。
中長期の成長戦略
またJX金属は、2024年5月に半導体セグメントと情報通信材料セグメントを、成長戦略の要である「フォーカス事業」と位置づけた中期戦略を発表しました。
2028年3月期には、半導体材料セグメントの利益構成比を45%以上、フォーカス事業全体の利益構成比を67%以上とする計画です。
2024年3月期と2025年3月期のセグメント別の売上高を比べると、半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントが伸びている一方、基礎材料セグメントが1/4以下に減少しています。
つまり、利益構成比の変更を進めることを背景に、2025年3月期は非注力分野の大幅な売上高減少を見込んでいると判断できます。
JX金属の上場後に株価は上がる?初値予想と株価見通し
それでは実際、上場後に株価が大きく上昇する可能性があるのでしょうか?
ここからは初値や株価の見通しについて考えていきたいと思います。
配当利回りは1.39%。「半導体分野での成長性」が焦点
JX金属は非鉄金属大手から半導体銘柄へと転身をはかっており、主力事業のひとつは、世界シェア64%を誇る「半導体用スパッタリングターゲット」です。
比較対象となる企業は、東ソーやデクセリアルズなど、同じくスパッタリングターゲットを扱う半導体材料メーカーで、これらの企業に近い水準で公開価格が設定されていると考えられます。
また、上場後の配当については、2025年3月期の期末配当12円と予想されています。
配当利回りは1.39%と高くありませんので、配当狙いの買いは入りづらいでしょう。
この点を踏まえると、割安感や配当利回りの高さを評価される銘柄ではない印象を受けます。
世界シェアトップを誇る半導体用スパッタリングターゲットを軸とした、今後の成長に期待できるかどうかが、株価の鍵を握るでしょう。
仮条件が想定を下回った理由とは?
JX金属の仮条件は810円~820円と、当初の想定価格862円を下回る水準となりました。
仮条件とは、IPOを行う企業が、公募価格を決める前に提示する価格の範囲のことです。
IPOの承認後、経営陣が機関投資家を訪問して成長戦略などを説明し、機関投資家からのフィードバックをもとに仮条件を決定します。
この際には、株式市況、価格変動リスク、同業他社との比較など、さまざまな点が考慮されます。
JX金属の場合、米国経済の減速懸念などによる、直近の株式相場の急落を受けて、仮条件が想定を下回ったと考えられます。
特に同社は非鉄金属セクターに属し、景気敏感株の一角として位置付けられるため、今後の価格変動リスクなども考慮して仮条件が引き下げられたとみられます。
一般的に仮条件が下方修正されると、機関投資家の評価が低いとみなされがちです。
しかし、今回は市場環境の影響が大きく、JX金属自体の成長性が否定されたわけではない点が重要です。
過去の大型IPOとの比較
では、株価はどのような推移になりそうか、過去に東証プライム市場に上場した大型IPOの上場後1ヵ月間の株価推移を参考に、推察していきます。
2024年10月23日に上場した【9023】東京地下鉄は、公開価格比+35.8%の初値を付けました。
【9023】東京地下鉄 日足チャート 2024年10月23日~2025年3月18日
一方、同年12月18日に上場した【285A】キオクシアホールディングスは、公開価格比-1.0%の初値をつけ、公募割れしています。
ただし、キオクシアホールディングスは、その後に大きく株価が上昇しました。
【285A】キオクシアホールディングス 日足チャート 2024年12月18日~2025年3月18日
東京地下鉄とキオクシアホールディングスで、初値の上昇率が大きく異なった要因としては、東京地下鉄の方が知名度が高かったことが挙げられます。
知名度の高さから、優待の権利などを狙った個人投資家による買いも入りやすかったとみられます。
JX金属の初値予想と上場後の株価見通し
JX金属は一般的な知名度が低く、景気変動の影響を受けやすい点が考慮されたことで、仮条件が引き下げられています。
しかしながら、大型IPOへの根強い人気を踏まえると、初値から大きく売られるとも考えづらいです。
そのため、公開価格比で+1〜4%程度の初値を想定しています。
上場後に買い付けを狙う、いわゆるIPOセカンダリー投資では、初値を付けた後の値動きが重要になります。
東証プライム上場銘柄ということもあって、上場直後の値動きの荒さが落ち着けば、底堅い株価推移となる可能性もあります。
ただし、先々の見通しが悪くなれば上場後の株価低迷が長期的に続くこともあり得ます。
JX金属でIPOセカンダリー投資を行う上で重要となるのは、新規公開で初めて付いた株価「初値」だと見ています。
機関投資家の評価が低いため仮条件が引き下げられている同社の初値が、公開価格820円を上回るようであれば、事前に懸念されていた外部環境の影響をこなす需要があると判断できるでしょう。
上場直後の株価推移は需給の影響を受けやすいため、公開価格を上回るかどうかは、非常に重要かつ注目すべき部分です。
JX金属の初値が公開価格を上回った場合には、機関投資家からの需要の強さがうかがえ、IPOセカンダリー投資の大きなチャンスとなるかもしれません。
まとめ:JX金属のIPOは買いか?
JX金属は半導体材料で世界トップシェアを持つ企業で、ENEOSからの独立により、非鉄金属から半導体関連企業へと転身をはかっていく見通しです。
長期的な成長が期待されますが、米国経済の影響を受け、仮条件は想定価格より引き下げられており、短期の値動きにはリスクも伴います。
まずは、どの程度需要があるのか、初値の動きを慎重に見極めることが重要となるでしょう。
株式情報 投資戦略 日本株 新規上場(IPO) 2025.03.18

この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 アナリスト日本投資機構株式会社 アナリスト
大学時代に投資家である祖母の影響で日本株のトレーディングを始める。大学時代、アベノミクスの恩恵も受けて、株式投資を投資金30万円で始め4年間で990万円まで資金を増やすことに成功する。卒業後、証券会社、投資顧問会社を経て2019年2月より日本投資機構株式会社の分析者に就任。モメンタム分析を最も得意としており、IPO(新規上場株)やセクター分析にも長けたアナリスト
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