ニッパツ(日本発条)の株価を展望!データセンター関連の高配当株として脚光浴びる
株式情報 日本株 2025.03.25

生成AIやクラウドサービスの急成長を背景に、世界中でデータセンターの新設が相次いでいます。
これに伴い、記憶媒体であるHDD(ハードディスクドライブ)の需要が再び拡大しています。
HDDの需要が拡大すれば、当然、その性能を支える精密部品の需要も拡大します。
そこで注目したい企業が、HDDの重要部品である「HDDサスペンション」で、世界トップクラスのシェアを誇る【5991】ニッパツ(日本発条)です。
本記事では高配当でPBR1倍割れと割安感が強く、HDDサスペンションで新たな成長の兆しを見せているニッパツの業績、株価の見通しを展望したいと思います。
目次
HDDとは?データセンターの新設ラッシュで需要拡大
パソコンなどに使われる記憶媒体には、大きくHDD(ハードディスクドライブ)とSSD(ソリッドステートドライブ)の2種類があります。
HDD(ハードディスクドライブ)は大容量のデータを保存できて、価格も安い一方で、
・衝撃に弱い
・SSDより読み書きが遅い
・消費電力が多く発熱しやすい
といったデメリットがあります。
そのため、パソコン市場では、より耐衝撃性が高く、読み書き速度が速いSSDにシェアを奪われていました。
しかし、データセンターでは、ストレージ(記憶装置)の大容量化が最優先されるため、コストパフォーマンスの高いHDDが依然として主流です。
HDDの出荷台数は2023年まで減少傾向にありましたが、2024年3月期で底打ちし、現在は回復基調にあります。
特にAI関連データを大量に保存するニーズが高まり、HDDの需要が拡大しているのです。
HDD用サスペンションとは?HDDの性能を支えるキーパーツ
HDDの中には、読み書きを行うヘッドが高速で動作するための精密部品「サスペンション」が搭載されています。
これは、ディスク表面のわずかな距離を正確に保ちながらヘッドを動かす非常に高精度な部品です。
データ処理の正確性・高速性を支える要であり、HDDの信頼性に直結します。
サスペンションは1台のHDDに複数搭載されることが一般的で、HDDの大容量化が進めば進むほど、必要数も増える構造になっています。
【5991】ニッパツは「HDDサスペンション」で世界トップシェア!
このHDDサスペンション市場で、世界トップシェアを握っているのが【5991】ニッパツ(日本発条)です。
ニッパツは、「懸架ばね」分野で世界トップシェアを誇る、日本を代表する独立系自動車部品メーカーですが、2025年3月期からは「DDS事業」を新たなセグメントとし、同事業の収益を急拡大させています。
DDSは『Disk Drive Suspension』の略で、その名の通りHDDサスペンションを主軸とした事業です。
2025年3月期第3四半期のDDS事業の営業利益は、前年同期比453.6%増の190億円となり、会社全体の利益の54%を占めるまでに急成長しています。
HDDの売上高は10-12月期単体では7-9月期と比較すると減速傾向ではありますが、それでも前年同期と比較すると大きく伸びていることが分かります。
ニッパツ(日本発条)の高い技術力が生む強み
ニッパツは、長年培ってきた以下の技術を強みとして、競争優位性を高めています。
・複雑な形状を成形できる薄板加工(非常に薄い金属の板を、曲げたり、切ったり、打ち抜いたりして、目的の形に加工する)技術
・ミクロンレベルの高精度量産を可能とするレーザー溶接技術
・高速・大量生産が可能な生産ラインの開発・稼働
現在、このHDDサスペンション市場は極めて寡占的であり、他社の新規参入は技術的・経済的ハードルが高いため、今後のライバル企業の参入も考えにくい状況です。
HDD市場とニッパツ(日本発条)の業績見通し
今後のHDD市場については、出荷台数は横ばいで推移するとみられています。
しかし、データセンター向けの高容量HDDの比率は着実に増加する見通しです。
データセンター向けHDDは大容量化が進んでおり、ディスクの枚数が増加しています。
ディスク枚数の増加に伴い、1台あたりのサスペンション搭載数も増えるため、ニッパツのDDS事業には引き続き追い風となるでしょう。
ただし、
・米国経済政策や関税の影響による自動車市場の不安定化
・データセンター向け設備投資の一時的な調整
には注意が必要です。
直近では、3月末の配当落ちや米国の経済政策の影響などもあり、短期的に株価が大きく動く可能性があるため、売買判断は慎重に行う必要があるでしょう。
ニッパツ(日本発条)の今後の株価を予想!注目は「成長ドライバーの転換」
最後に、ニッパツの株価動向を見ていきましょう。
【5991】ニッパツ 日足チャート 2024年9月25日~2025年3月25日
2024年2月12日の決算発表では、自動車の減産などの影響でシート事業が軟調に推移し、市場コンセンサスを下回りました。
これにより、決算前に1,900円付近にあった株価は下落し、3月24日時点では1,700円付近で横ばいとなっています。
しかし、3月24日時点での配当利回りは約3.7%と過去の水準と比べても高い水準となっています。
自動車市場の不透明感は続くものの、HDDサスペンション事業が成長していることで、同社のビジネスモデルは変化しつつあります。
DDS事業の利益貢献が今後も続けば、自動車偏重だったビジネスモデルからの脱却が進み、「成長ドライバーの転換」が本格化することで、改めて評価した買いが強まる期待ができるでしょう。
まとめ:AI時代のHDD需要拡大はニッパツに追い風
このようにニッパツは、世界的なHDDサスペンション需要の高まりを背景に、新たな収益の柱を築きつつあります。
特にデータセンターの成長とAI活用の拡大は、同社のDDS事業を支える強力なファクターです。
一方で、自動車業界やマクロ経済の変動リスクも残っており、短期的には株価の変動も予想されます。
中長期での成長性に期待しつつも、投資判断には柔軟性と慎重さが求められる局面と言えるでしょう。
株式情報 日本株 2025.03.25

この記事を書いた人
日本投資機構株式会社 データアナリスト
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
日本ディープラーニング協会認定ジェネラリスト(G検定)
日本投資機構株式会社 データアナリスト
テクニカルアナリスト(CMTA®)
ジェネラリスト(G検定)
総合鉄鋼メーカーに勤務していた経験を活かした、鉄鋼・自動車市場の分析及び情報収集を得意とし、データの集計・分析に基づいた統計等をもとに銘柄の選定を行う希少なデータアナリスト。AIに関する資格も有しておりデータサイエンティストとしても活動の幅を拡げている。
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